『もし、自分が居なくなった後、
 
 世界に自分の痕跡を何一つ残せないとしたら、
 
 どうしますか?』


 
 
 
名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失していく「喪失症」の蔓延する世界。
既に自らの名前を失った「少年」と「少女」は、一台のスーパーカブと、一冊の日記帳を道連れに旅に出ます。
 
 
 「……そもそもお前ら、一体どこまで行くつもりなんだ?」
 
 「そんなの、決まってるじゃない」
 
 くす、と少女が笑い、少年と顔を見合わせた。
 
 
   「「世界の果てまで」」

 
 
 
それは、あるはずのない場所を目指すということ。
永久に辿り着かずとも構わないということ。
 
学校も家も捨てて旅に出た少年と少女は、自らの背負う逃れようも無い宿命を常に見つめ続けながらも、決して悲嘆に暮れる事無く、ただ前へ進み続けます。
 
 
 「『後悔のないようにしろ』って言葉、あるじゃない?」
 
 「うん」
 
 「ばかみたい」
 
 「そう?」
 
 「どんな道を選んでも、少なからず後悔して、後ろを振り向きたくなる。当然じゃない」
 
 「つまり大事なのは、いつまでも振り返ったままでいないこと」
 
 「そういうことよ」

 
 
旅の途中で会社を辞めた「取締役」と「秘書」と出会い、仲間を失った「ボス」と出会い、世界を知らずに消えようとしている「姫」と出会います。
 
彼らは少年と少女にそれぞれ異なる何かを残し、少年と少女も彼らに何かを残していきます。
それは絆であったり、またあるいは仲間との想いの結晶であったり。
そしてそれらは少年と少女に刻まれ、日記に刻まれます。
 
たとえ旅の果てに答えが無くとも、旅の中に答えを探して。
 
明確に訪れるであろう、旅の終わりの時。
そこに「喪失」による別離しか無かったとしても、少年と少女は決して負けることはないのでしょう。
それこそが日記に隠された秘策。
決して、座してただ運命を受け入れるだけではない、強い意志を感じます。
 
そして、終幕での
 
 『ねえ少年、旅に出る前……あの日の学校に戻れるとしたら、どうする? もう一度、三ヶ月かけてここまで来れる?』
 
の問いへの答え。
 
 
 願わくば、少年と少女の旅がどこまでも続きますように。
 
 
################################
 
という訳で、毎度レビューっぽいものを書こうとして失敗します、いと播きです(吐血
いや、難しいですなw
 
ともあれ、タイトルと表紙に誘われて読んでみた本作、存外に良かったです。
何よりも、
 
 いきなり登場する人力飛行機w
 
いや本当に不意打ちでしたw
ふつう出さないでしょう。
しかも妙に描写が細かいw
作者の方が人力飛行機経験者かどうかは微妙な所なんですが(少なくとも、実際に飛ぶ機体の設計経験はなさそうですが・・・)、経験者以外でこの部分の描写を楽しめる人はいるんでしょうか?(汗
ちなみに自分は、実は微妙に楽しめませんでした。
まぁ、自分の場合は設計・製作経験があるせいで、細かい描写が出る度に理論的・技術的に可能かどうか一々本気で検証してしまうせいなんですが。
ある意味職業病w 
もっとこう、『へー、そうなんだー。』と素直に感心しながら読める方が良かった・・・orz
 
登場人物の人格が作中で結構ブレてるとか色々難点はあったんですが、それでも続きが出るなら読んでみたいと思うような良作でした。
とりあえず、「少年はね。私の物なの。んでもって私は、少年のものなの。だから、駆け落ちなんて絶対に有り得ないわ」が気に入りすぎた罠。
原付もあるし、荷物が乗るように改造も出来るので、だれか後ろに乗ってくれる少女を提供してくれないでしょうか・・・(遠い目
 

コメント

舞羽 愁
舞羽 愁
2008年3月14日1:54

世界の果て、というと『世界を革命する力』とか、『絶対運命黙示録』とか、そんな感じ?


ぇ、違うの?(キョト

いと播き
いと播き
2008年3月16日11:13

はいはいウテナウテ(ry

舞羽 愁
舞羽 愁
2008年3月17日2:07

わ。テキトーに流された!
ヒドイよ、タカくん(違

nophoto
由夢
2008年3月18日16:50

初めまして由夢です
よろしくです

いと播き
いと播き
2008年3月20日0:46

>舞羽さん
はいはい東鳩t(ry
 
>由夢さん
ご丁寧にどうも。
こちらこそよろしくお願いします。

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