振り返らずに羽ばたいていけ、とぼくは祈った。
 
ぼくらは寄り添ったまま、海を越えて遠ざかっていく自分の欠片を、
 
ずっと見守っていた。

 
 
 
 
 
という訳で、「さよならピアノソナタ」最終巻読了、いと播きです。
なんか昨日、あのまま読破するまで眠れなかったので、生活リズムがおもいっきり狂いましたw
相変わらず恐ろしいまでの引力を持ってますね、杉井先生の作品は。
 
 
恋と革命と音楽の物語、最終章。
すべて読み終えて思い返せば、本作は杉井先生によって提示された、全四楽章からなる壮大な『ピアノソナタ』だったように思えます。
読後に感じる余韻は、まさに演奏会を聞き終えた感覚そのもの。
おもわずアンコールをリクエストしたくなりますが。
 
タイトルの「さよならピアノソナタ」は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンによる作品81のa ピアノソナタ第26番変ホ長調「告別」を指すそうです。
かつてベートーヴェンが、戦火を逃れて疎開する友人のために作った曲。
 
初刊を読まれた方や音楽に詳しい方は既にご存知と思われますが、この「告別」には実は続きがあって、第二楽章は「不在」、そして第三楽章は「再会」なのだそうです。
故に『さよならピアノソナタ』。
この辺りのセンスも実に見事です。
 
 
最終巻でも杉井節は健在。
特に神楽坂先輩の漢っぷり(女性ですが)は異常w
 
 
 「だって強豪フランスが相手だし、我が国は得点力に欠けるから、日本代表としては最初から積極的に前に出ようと思って」
 
 「あのね、でも僕にはもう心に決めた人が二人もいるの」
 
 「大丈夫。私は三人いたし、たった今四人に増えたところ」
 
 
強豪過ぎるw
そしてカッコ良すぎる台詞回し。
 
 
 「ジョン・レノンだけはちがった。史上最も成功に近づいた革命家である彼は、まずそれ以前に音楽家だった。戦う前から、世界中が彼を見つめていた。
 
 五百年、千年の後に、ミハイル・バクーニンやレフ・トロツキーの名がすべて忘れ去られても、ジョンの名前だけは残るだろう。なぜならね、本質的に、言葉だけでは人の心には届かないからなんだ。
 
 言葉をほんとうに魂の底にまで至らせる方法は、たった二つしかない。
 
 血を流すか、歌を流すか、だ。」
 
 
あと今回は、いつもナイスな言動の哲朗パパも妙にカッコいいですw
 
  
 「あんまりよく聞こえねえだろうから、おれ、今からとんでもねえこと言うぞ! 親父が息子に言っちゃいけないせりふの、たぶんナンバーワンだ! 『おれみたいになるなよ!』」
 
 
セリフはダメダメですが、このシーンはちょっと震えた。
 
 
 
季節はめぐり、彼ら「フェケテリコ」の最後の冬がやってきます。
年末のライブに向けて練習を開始する主人公ナオミ、神楽坂先輩、千晶、そして真冬。
そんな中、真冬の身に起こる異変。
神楽坂先輩や千晶の交錯する想い。
 
 
  「それで、あなたは見つかったの? ほんとうの願いごと」
 
   心からの、願い。
 
  「・・・・・わかんない」
 
  「わたしは見つかった」
 
 
恋と革命と音楽の物語。
すべての結末は≪心からの願いの百貨店≫へ。
 

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